寺だより

2020.01.27

観自在

スマートフォンの所有率が国民全体の7割を超え、70歳以上でも5割以上が持つようになりました。スマホは見たいものを見せ、聞きたいものを聞かせてくれる大変便利な道具です。今やスマホなしの生活なんて考えられないという人も多いでしょう。ところで、テレビアニメ 『サザエさん』には現代では当たり前となったこのスマホが登場しません。その理由について、昭和の時代を描いているからだろうと思っていましたが、スマホを登場させると人間関係ががらりと変わってしまうことが理由だそうです。
確かにスマホは人と人の距離感を変えました。どこへでも持ち歩けるスマホだからこそ、誰かとつながっているという感覚をより強く味わうことができます。しかし一方で、スマホが手から離れず長時間スマホをやり続ける「スマホ依存症」という問題も生まれています。どんな便利なものにも落とし穴はあるということでしょうか。いや、落とし穴は人の心がつくるのです。スマホはさまざまな情報を届けてくれますが、基本的に人は自分の見たいものしか見ないのです。問題は、自分の関心のあるものだけしか見なくなると、自分の世界のことだけ、目先のことだけしか考えられなくなっていくことです。
自分が見えていないもののなかに、いろいろ大切なものがあるかもしれないと思うからこそ、人はさまざまなことを学び、自分の枠を広げ、いろいろなものとつながることができます。観音さまの正式な名前は観自在菩薩です、観自在とは観ることが自在であるという意味です。観音さまは自分の思い込みや、自分の欲にとらわれない見方ができるので、人の悩みや悲しみを理解することができ、智慧を働かせ多くの人を救うことができるのです。スマホ全盛時代、自分の視野が狭くなっていないかどうか、観音さまに会ってお尋ねするのもいいのではないでしょうか。

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