寺だより

2020.03.17

誕生日

誕生日を毎年お祝いすることは最近の習慣で、戦後になってからといわれています。今日では誕生日はとても大切な日となり、家族、友人をはじめSNSなどで知り合った人にも〝誕生日おめでとう〟の言葉を贈ります。誕生日の何がおめでたいのだろうと思い、めでたいの語源を調べてみると、めでたいは「愛でる」+「甚(いた)し」で、とてもいとおしいという意味です。つまり、おめでとうは、相手が年を重ねたことを喜ぶというよりも、「素晴らしい貴方に出会えて嬉しい」という気持ちで贈る言葉なのです。
4月8日はお釈迦さまの誕生日〝花まつり〟です。お釈迦さまがお生れになった時、美しい花が咲き誇り、甘露(甘い)雨が降って、天も地も祝福されたといわれています。「天上天下唯我独尊」は、お釈迦さまが生まれてすぐに語った言葉ですが、よくこの部分だけがクローズアップされ、自分が一番偉いと誤解され、イカツイお兄さんの服の背中に書かれたりします。しかしこの言葉には続きがあり、「天上天下唯我独尊」「三界皆苦我当度之」でひとつの言葉なのです。ふたつの言葉を、後ろから解釈すれば「すべての世界の苦しみをなくすことに自分は力を尽くす、それこそが唯一、自分の果たすべき尊い使命だ」という意味になります。お釈迦さまは生まれてすぐに、自分の人生の目的を定め、それを宣言したのです。すごいですね。そしてお釈迦さまは苦しみの原因をつきとめ、苦しみを無くす方法を説かれました。だから今でも、私たちはお釈迦さまの言葉を聞くことができます。4月8日花まつりの「おめでとう」は、お釈迦さまの教えに出会うことができた、感謝の言葉なのです。私たちが何気なく使う「誕生日おめでとう」の言葉が、「貴方に出会えて嬉しい」の言葉であるなら、素敵なことですね。

一覧へ戻る